光造形3Dプリンターの実用例を紹介!
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2022年6月24日
目次
光造形プリンターはどんな場所で使われているの??
今回は光造形3Dプリンターが実際の現場でどのように活用されているのかご紹介します!
光造形プリンターの導入を検討されている方、光造形プリンターを既にお使いの方も、新たな活用事例の参考にしてみてください!
特に光造形プリンターは「早く・安く・高精度」に造形できるプリンターです。光造形方式3Dプリンターの特徴を知りたい方は、以下記事も併せてご確認ください。どんな種類があり、どんな方法で造形物が出来上がっていくかご確認いただけます。
「光造形プリンターの特徴とは?」
光造形3Dプリンターの活用事例分野
光造形プリンターは非常に幅広い分野で活用されており、今回は以下に示す5つの分野の活用事例に関してそれぞれご紹介していきます。
- 歯科
- 医療
- 建築
- 産業(機械)
- エンタメ
では、各分野の活用事例をそれぞれご紹介していきます。
歯科
歯科用3Dプリンターは、歯列模型や矯正歯科、インプラント治療などの領域で用いられております。さらに具体的には、マウスピースの矯正装置「アライナー」やインプラント治療でシミュレーションどおりの位置に埋入をすることを支援する「サージカルガイド」などで活用されています。
歯科用の3Dプリンターは非常に導入が進んでおり、一般の歯科医院でも3Dプリンターを設置して、実際に活用がされています。歯科用3Dプリンターと、患者さんの口腔内形状データを撮影する3Dスキャナーと合わせて準備されている歯科医院さんもあります。
歯科用の3Dプリンターは、紫外線を照射することで硬化させ造形物を作りあげる光造形方式の3Dプリンターが活用されています。以下に示す画像はformlabs社の歯科用光造形3Dプリンターの造形後イメージです。特に、インプラント埋入用サージカルガイド部品を造形したものです。
参考:formlabs Surgical Guide v1
造形でできた部品は、人の内部に入ることが前提であるため、生体適合性の確認が取れた材料を用いていることが一般的です。また、取り出した部品は造形後工程(洗浄など)が終了したのち、オートクレーブによる滅菌処理が可能なようです。
このように、光造形3Dプリンターは歯科分野で幅広く活用されており、皆さんの身の回りの歯科医院さんでも導入・活用されている場所があるかもしれません。歯科向けの3Dプリンターは非常に開発が活発で、各社から様々なモデルが販売されています。
医療
医療分野でも光造形3Dプリンターは活用されています。体内に入れるような侵襲の高い分野での活用はまだ行われていませんが、臓器模型など手術を補助する目的として医療分野で活用されているようです。例えば、先天性心疾患がの手術シミュレーションが挙げられます。先天性心疾患は毎年国内で1万人弱の新生児が発症しており,胎生期の臓器形成異常としては最も頻度の高い疾患であります。国立循環器病研究センターのグループは、心疾患の手術シミュレーションを行い目的で、小児の先天性心疾患心臓レプリカを光造形プリンターを用いて作成しているようです。
参考:3Dプリンターによる 先天性心疾患手術シミュレーションへの応用
CTデータなどから3Dデータ(.stl形式など)に変換し、そのデータをすぐに3Dプリントすることができます。臓器の形は患者さん一人ひとり形状が異なるため、手術毎に異なる臓器モデルを確認する必要があります。1点ものの臓器模型に金型を起こすことは非現実的であり、このような分野で光造形3Dプリンターが活用されています。
本記事では取り上げませんが、医療分野では光造形方式以外でもSLS(粉末焼結方式)やインクジェット方式など様々な3Dプリンターの活用事例が報告されており、医療×3Dプリンティング(3D printing)は非常に親和性が高いでしょう。装具やサポーターにも活用されており、今後その活用分野はどんどん広がっていくのではないでしょうか。
建築
光造形3Dプリンターは建築分野でも活用されています。建築物の設計はCADソフトを用いて設計されます。そこで出来上がった3D図面は、ソフト上で確認することが多いですが、図面だけでは確認に不足している場合、実施にリアル模型を起こして確認することがあるようです。
従来はプラスチック製の部材を組み合わせて作成することが一般的でしたが、近年では光造形プリンターを用いて模型が作製され、設計者たちの現物模型確認に活用されているようです。
参考:3Dプリンタを使用した新たな建築模型の可能性
上図は、Formlabsの光造形3Dプリンターで作製された建築模型です。階段や木、複雑な建築構造の模型を人の手で作成すると非常に時間がかかっていましたが、3Dプリンターを活用することで非常に高精度の模型を簡単に作製することができているようです。
一方で、光造形プリンターを用いて建築模型を作製すると、従来と比較してコストが上がってしまうデメリットが挙げられます。徐々に光造形3Dプリンターは安価になってきており、ランニングコストが下がってきていること、材料費だけではなく作製する人の人件費や時間など費用以外の部分も含めトータルで考えると、導入が近くなるかもしれません。
産業(機械)
産業分野でも光造形プリンターは活用されています。特にエンジニアリングの分野では、プロトタイプ作製の用途で非常に頻繁に使われており、自動車メーカー、住宅設備メーカー、家電メーカーなどで活用が進んでいます。設計した部品をすぐに検証できることが、活用が盛んな理由ではないでしょうか。設計データを3Dプリンターに投入すれば、翌朝には取り出し・確認ができます。非常に高速な開発が進みますね。自動車業界では光造形プリンターを用いてモデル設計検証を行なっているようである。「「光造形」という名の、トヨタ新型車攻勢の秘密」の記事を抜粋すると、
「展示されていたのは『プリウス』の光造形モデルで、従来使われていた樹脂型でのモデル成形(1/1)では4カ月かかっていたところを、この光造形装置を使うことにより1.5カ月で試作モデルを製作することが可能となった。またデザインの検討や修正も半透明であるためスムーズになり、これまでの1/3の納期短縮と1/3のコスト削減が可能となった。」とあります。
日本を代表する自動車メーカー「トヨタ」も光造形3Dプリンターを用いてプリウスの設計を行なっており、コストや納期を削減し、非常に高速な開発を実現できているようです。
参考:トヨタ プリウス PHV特長
産業界では他にも活用事例があります。住宅設備メーカーでも部品の設計・検証のため光造形プリンターを活用しているようです。LIXIL(旧新日軽)では住宅設備の部品設計・検証時に光造形3Dプリンターを活用しているようで、住宅用クレセント(窓の開閉ロックを行う部品)の設計などで用いられてる事例が紹介されていました。
以下記事を参照するとその試作使用回数にも圧倒されます。
「3D造形モデルは約2500個、作成時間は約5800時間」
参考:導入事例 新日経株式会社様|3Dプリンターで造形した部品・部材のABS樹脂モデルで試作評価
光造形3Dプリンターで出来上がった製品は強度面(引張強度、疲労強度など)の問題や大量生産品の製造には適さないことから、産業分野の部品として活用される事例はまだまだ少ない印象です。特にマスプロダクツ分野では、高速で現物を確認できることから、試作・検証過程で「プロトタイプ作製」目的で使用されることが一般的でしょう。
しかし、量産品として活用されている分野ももちろんあり、その事例をご紹介します。
3Dプリンター分野でホットな会社に「Carbon社」があります。Carbon社の3Dプリンターは光造形方式に独自技術を組み合わせたものですが、ここでは光造形方式として扱います。Carbon社の3Dプリンターを用いて作られている量産品がアディダスのシューズ「Futurecraft 4D」です。底面のクッション構造部作製に3Dプリンターが活用されています。
さらにフェラーリの燃料供給部のバルブにも採用されています。
量産数が少ないことから金型を起こすコストと3Dプリンターで製造するコストを比較した結果、量産品の製造にも採用されているようです。
このように、光造形3Dプリンターは産業界の製品開発(試作・検証過程)で非常に頻繁に活用され、最近では量産品の製造にも活用の幅を広げてきているようです。プロトタイピングの領域では安価で簡単、かつ高速に試作品を作製することができることから、今後も積極的に活用されているのではないでしょうか。
さらに量産品も分野では、量産数の少ない製品、頻繁にモデルチェンジがされる製品や取り扱い終了になった商品のサポートパーツ製造などの分野で活用されている事例が見られ、さらに量産品の製造にも活用が進んでいくのではないかと思います。
エンタメ
医療や産業界だけでなく、エンタメの分野でも光造形3Dプリンタは活用されています。光造形方式は、造形精度がよく表面が滑らかに造形できることから、フィギュア作製などで頻繁に活用されております。非常に高精度にプリントできていることがわかりますでしょうか。形の決まったフィギュアは金型を作製し、量産すべきあり、3Dプリンターを活用するとコスト面で劣ってしまいます。しかし、3Dモデリングソフトで作製したフィギュアなど1点もののフィギュアを作製する際は、光造形プリンターの活用一択と言っても過言ではないでしょう。
モデルの単価や数にもよりますが、大量生産を考えていないモデルであれば、金型を作製した樹脂整形より圧倒的にコスト面で優れていると思います。光造形方式を応用したフルカラーの造形機などもあり、ますますフィギュア×3Dプリンターの活用が加速していくのではないでしょうか。
まとめ
本記事では、「光造形3Dプリンターの活用事例紹介」と題して、歯科・医療・建築・産業・エンタメ分野での活用事例をご紹介しました。
光造形3Dプリンターで作られた製品は私たちの身の回りにたくさん存在し、私たちが使っている製品も3Dプリンターを使って製造や設計開発が行われていることがお分かりいただけましたでしょうか。
光造形3Dプリンターは高速・簡単に製品を作ることができる特徴を有しており、導入を検討されている方は安価な光造形3Dプリンターもあるので、ぜひ検討を進めてみてはいかがでしょうか?