SLS3Dプリンターのメリット・デメリットとは?

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2023年7月1日

3Dプリンティングは、近年、産業分野での活用がますます広がり、より多くの注目を集めています。製造業から医療、教育、芸術まで、あらゆる分野でその利用が広がっています。この技術は、デジタルデータを用いて物理的なオブジェクトを層ごとに作り上げることで、従来の製造方法では難しかった複雑な形状の製品を作成することが可能になりました。
その中でも、特に注目を集めているのがSLS(Selective Laser Sintering)です。SLSは、粉末状の素材をレーザーで選択的に溶融(焼結)させて物体を作り出す技術で、その高い精度と複雑な形状の製造能力により、多くの産業で利用されています。
しかし、SLS方式は、その高い性能を享受する一方で、一定の課題も抱えています。高い初期投資コスト、運用コスト、粉末管理や安全性、後処理が必要になるなどが挙げられます。これらの課題はSLS 3Dプリンティングの普及を阻んでいます。
本記事では、SLS方式3Dプリンターのメリット・デメリットについて解説していきます。

SLS 3Dプリンティングとは?

SLSは、選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering)の略で、樹脂3Dプリンティング技術の一つです。そのほかに代表的なものとして、SLA(光造形方式)やFDM(熱溶融方式)などがあります。SLSは、粉末状の素材をレーザーで選択的に溶融(焼結)させて物体を作り出します。SLS方式は、その高い精度と複雑な形状の製造能力により、多くの産業で利用されています。
SLS 3Dプリンティングのプロセスは、CAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアで設計された3Dモデルから始まります。この3Dモデルは、プリンティングプロセス中にレーザーが追跡するパスに変換されます。次に、粉末状の素材がプリントベッドに均一に広げられ、レーザーが粉末を溶融し、固化させます。これにより、一層が作成されます。プリントベッドが下降し、新しい粉末の層が広げられ、プロセスが繰り返されます。これにより、層ごとに物体が作成されていきます。
SLS 3Dプリンティングは、その高精度と複雑な形状の製造能力から、航空宇宙、自動車、医療、製造業など、多くの産業で利用されています。例えば、航空宇宙産業では、軽量で耐久性のある部品の製造にSLSが使用されます。自動車産業では、プロトタイプの製造やカスタム部品の製造に利用されます。医療分野では、患者特有の形状を持つ医療器具やプロテーゼの製造に使用されます。
また、SLS 3Dプリンティングは、様々な素材で使用することが可能です。最も一般的な素材はナイロンですが、他にもガラス充填ナイロン、金属、セラミック、ゴムなど、様々な素材が使用されます。これにより、SLS 3Dプリンティングは、様々な用途に対応することが可能となっています。

SLS3Dプリンターのメリット

まずは、SLS方式3Dプリンターのメリットからご紹介します。大きく4つのメリットを挙げてみました。

メリット1:高い精度と複雑な形状の製造能力

SLS 3Dプリンティングはレーザーを使用して精密に粉末を焼結するため、非常に高い精度を持ちます。これにより、細部まで忠実に再現することができ、複雑な内部構造や、従来の製造方法では困難だった形状の製品も製造可能となります。

メリット2:サポートが不要

SLS 3Dプリンティングは、未焼結の粉末が自然にサポート材料として機能するため、サポート構造が不要です。これにより、製造プロセスが簡素化され、時間とコストを節約することができます。また、これにより、ハングオーバーや複雑なジオメトリの部品も製造可能となります。

メリット3:幅広い材料から選択できる

SLS 3Dプリンティングは、様々な素材を使用することが可能です。ナイロン、金属、ゴム、セラミックなど、多種多様な素材を使用することができます。これにより、製品の性質を特定の用途に合わせて調整することが可能となります。

メリット4:強度と耐久性

SLS 3Dプリンティングで製造された部品は、一般的に高い強度と耐久性を持ちます。これは、レーザー焼結により粉末が完全に融合し、均一な構造を形成するためです。これにより、SLS 3Dプリンティングは、機能的なプロトタイプやエンドユース部品の製造に適しています。

これらのメリットにより、SLS 3Dプリンティングは、航空宇宙、自動車、医療、製造業など、多くの産業で利用されています。

SLS3Dプリンターのデメリット

続いて、SLS方式3Dプリンターのデメリットをご紹介します。大きく4つのデメリットを挙げてみました。

デメリット1:高い初期投資コストと運用コスト

SLS 3Dプリンティングは、高い初期投資コストと運用コストが必要です。SLS 3Dプリンター自体の価格は高く、また、レーザーシステムや粉末管理システムなど、運用には高度な設備が必要となります。これにより、小規模な企業や個人が導入する際のハードルが高くなります。

デメリット2:粉末の管理と安全性

SLS 3Dプリンティングは粉末管理と安全性に関する課題を抱えています。粉末は吸入すると健康に影響を及ぼす可能性があり、適切な保護措置と管理が必要です。また、粉末は再利用する際に性能が低下する可能性があり、その管理には注意が必要です。

デメリット3: 後処理(ポストプロセッシング)の必要性

SLS 3Dプリンティングは、後処理(ポストプロセッシング)が必要です。焼結後の製品は表面が粗く、また、未焼結の粉末を取り除くために清掃が必要です。さらに、製品の表面仕上げを改善するためには追加の作業が必要となります。これにより、製造時間とコストが増加します。

デメリット4:表面仕上げ

SLS 3Dプリンティングは、一部の素材では他の3Dプリンティング技術と比較して表面仕上げが劣る場合があります。これは、粉末ベースのプロセスの性質上、製品の表面が若干粗くなる傾向があるためです。

【まとめ】SLS3Dプリンターのメリット・デメリット

メリット:

  • 高い精度と複雑な形状の製造能力
  • サポート不要
  • 幅広い材料から選択可能
  • 高い強度と耐久性

デメリット:

  • 高い初期投資コストと運用コスト
  • 粉末の管理と安全性
  • 後処理の必要性
  • 表面仕上げ


SLSにより作られた製品は高い強度や耐久性を有するため、最終製品として活用されることも多いですが、一方で初期投資・運用コストが他の3Dプリンティング方式と比較してかかるため、導入にはコストを慎重に検討する必要があるでしょう。